アーサー王伝説(King Arthur)
岩から剣を抜く

 

 

 

 

 

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剣を引き抜くアーサー

・魔術師マーリンに守られ、不思議な運命を持って生まれたアーサー王
・岩から剣を引き抜き王となるや、名剣エクスカリバーを手に入れ、
・ブリテン国を統一する、そして、美しいグィネヴィアを妃に迎え、
・円卓の騎士と呼ばれる地上最高の騎士たちに囲まれる
・しかし、理想の騎士団の結束は長くは続かなかった・・・

 410年、ローマがブリタニア(イギリス)から撤退すると、ブリタニアには再びケルト人の国家ができた。イングランド王ユーサー(Uther Pendragon)は、コーンウォール公の妻イグレインを見そめ、魔術師マーリンの力を借りて夫になりすまし、彼女のベッドに忍び込んだ。イグレインは身ごもり、男の子を出産した。その子はアーサーと名付けられ、騎士エクターの子供として育てられた。

 ユーサーが亡くなると、後継者がなく王位に空白ができた。そんなある日、カンタベリー寺院に剣の刺さった不思議な石が現れた。
「この石から剣を抜いた者がイングランドの王である」

 多くの騎士がチャレンジするが、誰も剣を抜くことができない。ところが、偶然通りがかった15歳のアーサーは簡単に剣を引き抜いた。育ての親のエクターはアーサーに出生の秘密を打ち明け、アーサーはイングランド王になった。

ブリテン統一
エクスカリバーを手に入れる

 多くの家臣は本当にアーサーが自分たちの王なのか疑っていた。アーサーは何度も岩から剣を抜いて見せた。それでも何人かの王は納得しなかった。

 アーサーとマーリンは大きな美しい湖にやってきた。すると湖の真ん中から、立派な剣を持った白い腕が出てきた。その剣は湖の乙女(Lady of the Lake)のもので、アーサーは彼女から名剣エクスカリバーを譲り受けた。翌朝マーリンはアーサーに反逆者たちを成敗するよう進言した。アーサーはエクスカリバーを持って勇敢に戦い反逆者たちを成敗した。

 続いてアーサーは、多くの場所で国を荒らしているサクソン人の征伐に乗り出し、ブリテンを統一した。さらにアイルランド、ノルウェー、ガリアに遠征して平定した。アーサーはキャメロットを都に定めた。キャメロットは現在のイギリスの町コルチェスターではないかといわれている。

グィネヴィア(Guinevere)
王妃グィネヴィア

 アーサーはマーリンの反対を押し切って、レオグランデス王の娘で絶世の美人グィネヴィアを妃に迎えることにした。彼女は大きな円卓を持参してキャメロットに入城した。

 円卓にはアーサーに忠誠を誓った勇敢な騎士が座ることができた(円卓の騎士 Knights of the Round Table)。騎士の中には、アーサーの甥のガウェイン、アグラベイン、ガヘリス、ガレスや湖の騎士ランスロット(Lancelot)、聖杯探索を行ったパーシヴァル、アーサーの息子モルドレッドなどがいた。彼らは強い絆で結ばれていた。

 騎士の中で一番上品で武勇に優れていたのがランスロットだった。彼は湖の精ニミュエによって育てられたため、湖の騎士と呼ばれた。グィネヴィアは彼に一目ぼれし、不倫の恋に落ちてしまう。これが騎士団分裂の最大の原因となった。彼はトランプのクラブのジャックのモデルになっている。

アーサーとランスロットの戦い

 

 

 

 

 

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円卓の騎士

 ある日、宮廷で行われた馬上槍試合でランスロットが優勝した。負けた騎士たちはランスロットを恨んだ。ある夜、王妃はランスロットを部屋に呼び出した。それを見つけた騎士たちは密会していると騒ぎ立てた。動転したランスロットは騎士たちを殺して逃亡した。王妃は不義の罪で捕まり、火刑が宣告された。

 王妃の処刑の日が来た。薪が積まれ、まさに刑が執行されようとした時、ランスロットが現れ王妃を救出した。この時、多くの騎士がランスロットの手によって命を落とした。アーサーはランスロットの城を攻めたが、王と戦う気がないランスロットは王妃を返してフランスに逃げた。

 アーサーは息子のモルドレッド(Mordred)に留守を任せてフランスに渡った。両者は激しく戦ったが決着がつかない。一進一退の攻防が続くなか、留守を守っていたモルドレッドが反乱を起こした。彼は、アーサーの義理の姉モルゴースの息子で、アーサーが義姉とは知らずに愛して生まれた子供だった。

アーサー王の死


アーサー王の最期の眠り(ポンセ美術館:プエルト・リコ)

 アーサーはイギリスに引き返した。この戦いでも多くの騎士が死んでいった。そしてモルドレッドとアーサーとの一騎打ちが行われ、アーサーはモルドレッドを倒すが、瀕死の重傷を負ってしまった。

 傷の深さを知ったアーサーは、エクスカリバーを湖に投げ込むように指示した。ためらう部下が剣を投げ入れると、水中から2本の手が現れ、剣を受け取った。そして、剣を空に向かって振り、水中に消えた。「余をあの舟へ」。岸辺には一艘の舟がいて、3人の貴婦人が乗っていた。一番美しい妃がアーサーを招きいれ、、頭を膝の上にのせて泣いた。彼女はモルゴースだった。二人は湖の彼方に消えていった。

 アーサーの死後、グィネヴィアは尼僧となり、ランスロットも世を捨てて神に仕えた。二人は二度と逢うことはなかった。グィネヴィアの死が伝えられると、ランスロットは食を絶って彼女のあとを追った。

 ローマ人が撤退したイギリスでは、先住民ブリトン人(ケルト人)と侵入してきたアングロ・サクソン人とが激しく戦った。結局サクソン人がイングランドの支配者となり、ブリトン人はウェールズやスコットランド、海を越えたブルターニュ(フランス)へと追われた。この戦いの中、一時的にサクソン人を破って平和を築いたブリトン人の英雄は長く語り継がれ、アーサー王の伝説になった。

トランプのモデルになった人々


カンタベリー寺院
トランプ
キング
クイーン
ジャック
オジェ・ル・ダノワ
ランスロット

【オジェ・ル・ダノワ(Ogier le Danois)】 デンマーク王ジョフロアの息子でカール大帝に仕えた。デンマークではホルガー・ダンスクの名で親しまれている。ローラン達と同様に異教徒との戦いで活躍する。デンマークのクロンボー城の地下に眠り、デンマークの危機には目を覚まして救いに駆けつけるといわれている。また、魔女モーガン・ル・フェイ(アーサーの義理の姉モルゴースの妹)が伝説の島アヴァロンへ連れ行き、今でも幸せに暮らしているという説もある。
 
【参考資料】
アーサー王伝説 アンヌ・ベルトゥロ 創元社
アーサー王物語 ジェイムズ・ノウルズ 偕成社文庫