仏教

釈迦


仏陀(インド国立博物館)

 釈迦は釈迦族の王子として裕福な生活を送っていたが、29歳で出家した。35歳で悟りを開き仏陀となった。そして、その悟りを説いて廻り、80歳で入滅(死去)した。

 釈迦が産まれた時、七歩歩いて右手で天を、左手で地を指し「天上天下唯我独尊」と話したと言われている。ほどなく母の摩耶(まや)は亡くなり、母の妹によって育てられた。釈迦は父浄飯王の期待を一身に集め、多感で聡明な青年に育った。16歳で母方の従妹と結婚し、一子をもうけた。

 子供ができて跡継ぎ問題が解決した29歳の時、出家した。6年間、厳しい修行を積んだが、「苦行は心身を消耗するのみで、人生の苦を解決することはできない」と悟った。

 釈迦は苦行を打ち切り、ガンジス河の支流ナイランジャナー河(尼連禅河)で沐浴し、疲れきった体を休めた。まさに、瀕死の状態だった。 そこに村娘スジャータが通りがかり、牛乳かゆを飲ませて命を救った。彼女は、「琴の弦は締めすぎると切れてしまう、締め方が弱いと音が悪い、中くらいに締めるのが丁度良い」 と唄った。

 それから釈迦は、ガヤー村の菩提樹の下で、49日間の観想に入った。そして、12月8日未明に悟りを開く。35歳の時であった。ガヤー村は、仏陀の悟った場所、ブッダガヤ(仏陀伽耶)と呼ばれた。


仏塔(サールナート インド)

 釈迦は、一緒に苦行した5人の仲間に悟りへの道:四諦八正道を説いた。。釈迦が初めて説法を説いた地がインド北部の町サールナート(sarnath)である。ここは仏教の四大聖地の一つで、鹿が多くいたことから鹿野苑(ろくやおん)ともいう。

 仏陀は北インドを歩きながら人々に法を広めていった。その結果、教団は急速に大きくなり、1000人以上の弟子が集まった。マガダ国の竹林精舎とコーサラ国の祇園精舎は、仏教教団の2大拠点だった。

 BC386年2月15日、80歳の時、クシナガラ郊外で2本の沙羅双樹の間に横たわって入滅した。これを仏滅という。遺骸は火葬され、信者に遺骨(仏舎利)が分けられ、仏塔(ストゥーパ:stupaまたはパゴダ:pagoda)に納められた。

 弟子達は彼の残した言葉を編纂し、経典として伝えた。

四苦八苦


仏陀の生涯(インド国立博物館)

 すべては苦である。人間は、「必ず移り変わるもの」を「永久に不変のもの」と錯覚し執着する。一時の喜びや、楽しみは、いつかは消え、必ず「苦しみ」がつきまとってくる。酒や遊びで一時逃れをせず、しっかりと「現実」を見すえて「苦」を正面から受け止めることが大事。人間は四苦八苦を経て成長する。

生(しょう)
生きるということは苦である
老(ろう)
老いていくことは苦である
病(びょう)
病にかかることは苦である
死(し)
死ぬということは苦である
愛別離苦(あいべつりく)
愛するものと別れるのは苦である
怨憎会苦(おんぞうえく)
怨み憎む者と会うのは苦である
求不得苦(ぐふとっく)
求めても得られないのは苦である
五蘊盛苦(ごうんじょうく)
五蘊とは色・受・想・行・識のこだわりの苦しみ。

 釈迦は、「苦」を8種類に分類した。生・老・病・死を四苦、愛別離苦・怨憎会苦・求不得苦・五蘊盛苦の四苦を合わせて八苦と呼ぶ。

四諦八正道


涅槃像(アジャンタ遺跡 インド)

 四諦(したい)は、釈迦が説いた人生の真理。四苦八苦(しくはっく)を滅する方法。

1.
 苦諦 くたい 暑さ寒さ、天災地変、飢饉、疫病、貧困、不安、老い、死などの苦しみがあり、人生は苦であることをさとる。
2.
 集諦 しったい 「集」は原因のこと。苦にも必ず原因があり、それを探求すること。欲望を増大させ、人の迷惑をかまわない行為が、不幸を呼び起こす。苦の原因は心の持ち方にある。
3.
 滅諦 めったい 心の持ち方を変えることによって、あらゆる苦悩は消滅するという教え。
4.
 道諦 どうたい 苦を滅する道は苦から逃れようとするのではなく、八正道(はっしょうどう)を行うことである。
八正道
エローラの仏教遺跡(インド)

 八正道とは、を滅するための8つの正しい道のこと。

正見
自己中心的な見方や、偏見をしないこと。
正思
自己本位でなくすること。貧欲(自分勝手)、瞋恚(意に添わないと怒る)・愚痴(不平・不満)という意の三悪を捨てること。
正語
正しい言葉使いをすること。妄語(嘘)、両舌(二枚舌)、悪口、綺語(口から出任せ)の口の四悪を行わない。
正行

本能のままでなく、仏の戒めにかなった行いをすること。仏が戒めたのは殺生、偸盗(ちゅうとう)、邪淫(道ならぬ色情関係)という身の三悪 。

正命
人の迷惑になる仕事や、世の中の為にならない職業によって生計を立ててはいけない。
正精進
自分に与えられた使命や目的に対して、正しく励み、怠りや脇道にそれたりしないこと。
正念
正しい心を持ち、小我(自己本位)をせず、ものごとの真実を見極めること。
正定
決心が外的要因や変化に迷わされないこと。
縁起
アジャンタ石窟の仏像(インド)

 縁起とは、因縁生起(いんねんしょうき)の略で、世の中のすべてのことには、因(直接原因)と縁(条件や環境などの間接原因)がある。それらが関連していろんなことが起こるということ。

 ・此れあれば彼れあり、此れなければ彼れなし
 ・此れ生ずれば彼れ生ず、此れ滅すれば彼れ滅す

 「此」と「彼」とが相互に支えあっており、それぞれ個別に存在するものでない。

 種を蒔かないと芽は出ない。種を蒔くには土がいる。種を蒔いても水をやらないと芽は出ない。太陽の光もいる。蒔かれた種をほじくりかえす動物や蒔かれた場所を踏み荒らす人間がいても芽は出ない。

 この場合、種を蒔くことが「因」で、芽が出るための環境や条件が「縁」。

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【参考資料】